医療機関における診療報酬の不正請求は、詐欺罪として刑事責任を問われる可能性があります。また、行政処分として保険医療機関の指定取消や保険医の登録取消を受ける可能性もあります。本記事では、診療報酬不正請求の法的責任、詐欺罪の成立要件、行政処分の内容、弁護活動のポイントについて、刑事弁護士が徹底的に解説します。
診療報酬制度とは
診療報酬制度とは、医療機関が患者に提供した医療サービスに対して、公的医療保険から報酬を受け取る制度です。日本の医療保険制度においては、患者は医療費の一部を自己負担し、残りの部分を公的医療保険が負担します。
医療機関は、提供した医療サービスの内容を診療報酬明細書(レセプト)にまとめ、審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会)に提出します。審査支払機関は、レセプトの内容を審査し、適正と認められた場合に医療機関に診療報酬を支払います。
診療報酬の額は、診療報酬点数表に基づいて計算されます。診療報酬点数表には、様々な医療行為に対する点数が定められており、1点10円として計算されます。医療機関は、提供した医療サービスに応じた点数を算定し、診療報酬を請求します。
診療報酬制度は、医療機関の経営の基盤となる重要な制度です。しかし、この制度を悪用して不正に診療報酬を請求する行為が問題となっています。
診療報酬不正請求とは
診療報酬不正請求とは、実際には提供していない医療サービスについて診療報酬を請求したり、実際に提供した医療サービスよりも高額な診療報酬を請求したりする行為を指します。
診療報酬不正請求の典型的な手口としては、以下のようなものがあります。まず、架空請求です。これは、実際には診療していない患者について診療報酬を請求する行為です。例えば、既に通院していない患者について、継続して診療しているかのように装って請求する、実在しない患者を作り出して請求するなどのケースがあります。
次に、付増請求です。これは、実際に提供した医療サービスよりも多くの医療サービスを提供したかのように装って請求する行為です。例えば、実際には行っていない検査や処置について請求する、実際よりも多くの薬剤を処方したかのように装って請求するなどのケースがあります。
また、振替請求もあります。これは、実際に提供した医療サービスとは異なる、より高額な医療サービスを提供したか